ボケテ地域(1)

 

 ボケテはパナマの国の最も西にある、コスタリカに隣接したチリキ州の山に囲まれた中にあります。チリキ州は中米の真ん中を走るタラマンカ山脈に接し、コスタリカと二分するアミスタット国立公園やバルカン国立公園を含み、パナマで最も標高の高い地域です。その中でパナマで一番高いバルカン火山があります。山を越えると、カリブ海側のボカス・デル・トロの群島に出ます。太平洋側の町、州都ダビーから山脈に向かって40km北にある、標高約千メートルの風光明媚な町がボケテです。バルカン山の谷の中にでき、ここだけは雨が少なく、風がやや吹き、涼しい気候なので避暑地として恰好なところです。以前は数多くの部族の先住民族が住んでいたのですが、19世紀に入って北欧からの移民が行われ、特に、スイス人の入植が目立ち、色とりどりの家々が点在し、ヨーロッパ的な雰囲気が漂っています。何といっても微気候なので、コーヒー生産にとっては最適です。いまや、世界的に有名なスぺシャリティーコーヒーの原産地となっています。暑い平地では穫れない野菜やかんきつ類やガーデニングの花の生産も盛んです。それとともに、西洋的な建築物や熱帯雲霧林に生息する動植物は観光客を引き寄せてやみません。そのため、チリキ州はパナマで経済的に最も豊かな州となっています。

 この地域はパナマ東部では見られない動植物の宝庫です。高地と気候と樹木などの特殊な環境で、パナマでここにしか見られない、世界で一番美しいといわれている鳥、ケツァールが数多く生息しています。また、ヒゲドリ、サンショクフウキンチョウ、オウゴンイカルなどが唯一、ここで見られ、ジャガーの生息地にもなっています。観光客にとってはスカイアドベンチャーの設備があり、コーヒーショップが並び、バードウォッチングやトレッキング、カヤッキングも魅力的です。また、先住民族も数多く、パナマ7部族のうち4部族が住み、一番人口の多いグァイミー族は衣装が鮮やかです。集団で住むことはなく、藁ぶきの家で、手作りのカヌーで行き来し、独特な文化を持っています。

 

f:id:shuasai1207:20190921112235j:plainボケテ

ヒゲドリは体長30cmの大きな鳥で、くちばしの根元から三本の虫のような長いひげを垂らしていますので、すぐ見分けることが出来ます。が、高い木の上にいて前後に動き回るので見つけるのが大変です。いつも大きな口を開けて、聞くに堪えないような甲高い金属音の声を出しています。生息地はパナマの西部が南限です。

f:id:shuasai1207:20190921112344j:plainボケテ

高い木の上の枝に群れを成して飛び交っています。色鮮やかな鳥ですが、下には、あまり下りないので、なかなかその美しい姿をじっと見ることが出来ません。ガイドが導いてくれないと、鳴き声も小さいので素通りしてしまいます。この鳥もパナマ西部が南限です。

f:id:shuasai1207:20190921112513j:plainボケテ

明るい開けた場所が好きで、庭先にも下りてきて、人懐こい様子であまり逃げません。はっきりした声で鳴きます。対でいるのが多いですが、ほかのフウキンチョウとも一緒に戯れたりしています。特に、ソライロフウキンチョウと一緒に戯れている姿は、赤と青のコントラストで非常に色鮮やかでした。