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ダリエン国立公園(2)
私たち夫婦とパナマ環境省のスタッフ2名と国境警備隊の兵隊5名とダリエン国立公園へ視察に行きました。下記はその時の紀行文です。
未踏の地ダリエンを探検して
パナマのダリエン州はコロンビアとの国境にあり、面積約60万ヘクタール、世界遺産に指定されている国立公園である。北米と南米の接触点で、二つの大陸が狭い地域で繋がっているので熱帯の動植物が多種密集している地域である。さらに、アラスカから始まっているアメリカンハイウェイがそこで途切れ、奥深い未踏の地として探検家、生物学者の注目の地ともなっている。
私はダリエンとはどのようなものかと好奇心を持ってパナマ市を出発し、ダリエン国立公園へ向った。 まず、陸路と川路でダリエン州の州都ラ・パルマに。そこから川を上ってエル・レアルへ到着。 普通はそこから4X4の車か馬となるが、雨期なのでモーター付きのカヌーでさらに支流を上った。川沿いには色鮮やかなカワセミ、アマサギ、ダイサギ、アメリカサザゴイがいる。ピンク色の大きなベニヘラサギ、ナンベイヒメウ、白いオジロトビ等を見る事が出来た。
ツイラ川をボートでダリエン国立公園へ向かう
上流に来てカヌーを降り、そこから目的のANAM(環境省)レンジャーステーションまで歩く。途中、巨木に何本も出くわす。セイバ、クイポ、ブオなど何千年も経っている原生林だ。 直径30センチのツルが幹に巻きつき、木から木へ垂れ下がっている。なぜ、そのような太さのものが曲がりくねって絡み付くのか理解できない。また、さるのためにあるような、細いツルがツリ橋となって階段を作っている。人工的に細工したとしか思われないが、自然に出来たと言う。
長さ40センチ、太さ5cmくらいのミミズのような足のないイモリが地を這っている。 全てが巨大である。 幾層にも連なっているジャングルを行くと次第に暗くなり、ガイドの懐中電灯のみを頼りに5~6時間歩き続け、全てが真っ黒に包まれた頃、ようやくダリエン国立公園の入り口、レンジャーステーションに辿りついた。 ここを訪れた日本人は私達が初めてだと言う。インディオの家族が山番をしながら住んでいる。 私達が着くとレアルから運んできた鶏、米、豆などでインディオの女性がろうそくの火を頼りに夕食を作ってくれた。 火に照らし出された食事を食べながらインディオのガイドにダリエンの様子を聞いた。毎日、コンゴウインコがこのステーションの上空を飛び越えて行くと言う。 真っ暗な中で、最果ての地に来たなと実感した。
ダリエン国立公園内のピレー・レンジャーステーションにて
翌朝、インディオのガイドに導かれてトレイルの探検に出発した。道はあるようで無く、私達が歩いて作っていくようでもある。ちょっと歩くと私は見過ごしてしまったが、ガイドが青く白い斑点のある人差し指ほどの蛙が土の中にもぐろうとしているのを見つけた。矢毒蛙である。また今度は緑に白い斑点のある蛙、赤く黒い斑点の蛙、茶色と黒いすじの枯葉と全く見分けられない蛙、など一つの場所でいろいろ出合った。しばらく行くとコンゴウインコの鳴声が聞こえたが、姿は見えなかった。木の葉が生い茂りすぎて鳥の鳴声がしても姿は見えない。双眼鏡をのぞくと黒い色で頭と顔だけが真っ赤なフウキンチョウ、金色頭のキヌバネドリが見える。小高い所を登り切ると、前を冠頭の七面鳥大のオオホウロンチョウが横切った。ここはここでしか見られない鳥や動物の宝庫である。時間が無かったので惜しい気持ちを抱きながら帰りの途についた。60万ヘクタールの公園のわずか10ヘクタールしか歩かなかった。
帰る途中、ラパルマの町で市長自らが日本の観光客を呼び寄せるのにどうしたらよいか、そのための会議を開きたいと言ってきた。観光に関心のある地方団体、インディオ、女性団体の各リーダー、取材記者などが召集された。私が現地の日本人コーディネーターとして話す事になった。やはり手づかずになっているインフラ設備の充実として、ある程度まで四輪が行けるようにする、ロッヂの設備、ガイドの専門化、お客に対してサービスの実行、ごみを捨てないなどが話題になる。まだまだ、この地域からエコツアーの動き、そのための自然保護の運動の音は聞こえて来ない。
ラ・パルマ市長との会合
その中で唯一、自然保護団体としてダリエンを守っているのがアンコンである。自然保護の資金をもとに、この地域のエコツアーも企画し、ロッヂも経営している。彼らは一番最初にパナマの自然に目覚め、いくつかの地域を保護地域にし、今も保護活動の先頭に立っている。この州のプンタパティーニョ地域は森林伐採で崩壊寸前であったが、彼らが買い取り保護地域にした。このようにダリエンは自然の資源は無尽蔵にあるが、その反面、自然破壊は急速に進んでいる。しかし、今政府も地域住民も何とか観光産業を起こし、この地域を活性化しようとしている。私は今がパナマで観光産業を興すチャンスであり、この地で観光が進めば、政府、住民が環境保護に立ちあがるのではないかと思っている。